私は小さい頃は体が小さく、食べ物への反応も敏感で、よくお腹を壊したりしていた、あまり強くない子でした。体調によって食べられるものが違い、時には、小腹が空いてコンビニに入るものの、食べたいものが見つからずに出てくる…ということもありました。
そんな生い立ちもあり、食への興味を持って、添加物のことや、農薬、遺伝子組み換えのことなどを独学していて、大学卒業後は生協に就職しました。最初は食材を会員のお家に配達をする業務をして、その後は本部組織で加工食品の開発担当に従事させてもらいました。
配達業務をしていた時はトラックと荷台の乗り降り、一日60件の配達、お米や飲み物なども運ぶ仕事は、まさに肉体労働でした。そこで食事は仕事のパフォーマンスに大きく影響するので、色々と考えました。
その時に、この話を思い出したのです。
かつて、人力車夫と呼ばれる職業がありました。諸説あるようですが、80kgの人を乗せて3日間で40kmほど走っていたそうです。彼らの食事は、一日二回玄米の乾飯と漬物程度で、普段の食事も麦入り玄米ご飯、漬物、 いわしの塩焼き、味噌汁、たまに豆腐や納豆程度だったとのこと。
明治時代頃には、ドイツから医学を教えに来たエルヴィン・フォン・ベルツ氏は、人力車夫の体力に驚き、ある実験を行いました。Aグループには、従来通り 日本食のお米、大麦、芋類、栗などの高炭水化物、低タンパク質の食事。Bグループには、西洋の肉 類を中心とした高タンパク質の食事。それぞれ体重80kgの人を乗せ、1日40km、3週間毎日走らせました。和食のAグループは、3週間走り切り、体重もさほど落ちませんでした。西洋の食事をとったBグループは、3日ほどで、疲労が激しくなり、 走れなくなりました。元の和食にしたらまた体力が戻ったそうです。
試作は1年間かけて、味だけではなく、食感や、添加物を使わずにうまくバー状になるようするために、何をどれくらい配合するかを毎回変えて、何十回と試作を重ねてきました。
また、これまで友人やお世話になっている多くの方に試食をしてもらいました。僕自身、大学の体育会バドミントン部で選手をしていたのもあり、スポーツで体力を消耗する方にも勧めたいと思い、試食をお願いしました。
また、コワーキングスペースに協力してもらい、働く社会人の方など20~30人くらいの方に食べてもらいました。
私たちは望むのは、食べる人だけが便利に、元気になるのではなく、なるべく国産の食材を使用することで、作り手が希望を持ち、つくる人も食べる人も安心して日本の食べ物を食べて暮らせる世の中の仕組みをつくっていくことです。
そのため、今後は日本のいろいろな食材に焦点を当て、それを現代版にアレンジして、より多くの人が美味しく、食べやすい食品として開発していきたいです。
相澤 和宏(あいざわ・かずひろ)
ジャパンエナジーフード株式会社 代表取締役。小学校時代から環境問題に興味をもち、様々なジャンルの環境問題を独学する。食こそが一番取り組むべき課題と考え、生協に就職。その後違う職種を経験した上で、起業を決意。2児の父。子どもを抱っこした瞬間が一番幸せ。趣味はバドミントン。